一隅を照らす

茨木のHさんのご来店。
いつもながら、お客様から教えられることばかりだ。

Hさんとは、今まで念珠の話が多かったけれど
たまたま写経のコーナーで立ち話となった。

「写経っていいですよね」
「願文には何書いたらいいんでしょうね?」

と聞かれるので
「病気平癒の為や、○○供養の為というのもいいけれど、
天台宗では亡己利他を言われるのだから、より利他する願文がいいんじゃないですか」

天台宗のお寺で勉強していらっしゃるようで、
「そうですね」と納得のご様子。

ポロリ、ポロリと玄人はだしの言葉が漏れるHさんには、
釈迦に説法のようだった。
以前うつした写経紙を見ると何を考えながらのものか、
一目でわかるという。
「自分にとって写経は日記のようなものなんですよ」

天台宗では「一隅を照らす」者を国宝と考える。
ご本人は、まったく気付いていないようだ。
けれど、言葉の一言一言が、きらきら輝いていました。

最後に一言、置き土産。

「写経は、仏様へのお手紙ね」とHさん。
毎日欠かさずうつしているから自然に漏れる一言だろう。

「じゃあ、仏さまへのラブレターですね」
我ながらしゃれたことを、言ったもんだと
こういう人の前では、するりと言葉が引き出される。