十五年

もう15年経つ。
沈香の香りが好きで腕に付けてとにかく付けっぱなし。
もう真っ黒になっているが、もともとの色合いに輪をかけて
僕の色に染まっているのだ。

こんな色になっても、沈香の匂いはむせるほど香る。

大きい玉が二天となるがこれは、玉の試験のため入れた。
最近の玉の代表格で白っぽいもの、暗黒だが、年輪がはっきりしないもの
あえて二種類を抽出して組んでみた。

数ヵ月後にどう変化しているだろうか。

舌をまく

お客様のMさん作、念珠直し読本。
ぼくが「こうやって、ああやって直すんですよ」と説明したことを
逐一記憶されていて、海外にいる同門の修行者のために
お直しセットを作ってしまった。

元来、英語に堪能な方だからちょちょいのちょいっという感じで
簡単にこさえたかと聞くと、
「いやいや結構こういう翻訳はめんどくさかった」と、同情を求められた。

「それは大変でしたね」と見え透いた反応をし、
ありがたく試作品を頂戴した。

これで海外の仏教者の方に
こうやるんですよと念珠作りを気安く説明できると言うものである。

あ。その前に読まないといけなかった・・・

25年ぶりに友人とひょんな所で再会した。

実はトイレに入りながら、彼のことを思い出していたのだ。
恩もあるのに挨拶一つしていない。

何かのつてを使って近々調べてみよう・・・

と思い立って、後ろで順番待ちしている気配に気遣い、
早々に切り上げ、どうぞと交代しようとした。

何の気なしにその顔を見た。
血の気が引いた・・・いや、狂喜した。
その本人が立っていたのだ。

何故?
なんて全く思わない。

やあー・・・言葉にならなかった。
握手を交わし、近況を伝えた。
世話になった彼のお母さんは亡くなっていた。仕事も替えていた。
すっかり様相は変化してしまったが、時の経過もすっかり忘れ
白髪が多くなったことも、形容しがたい身体的変化も目には入らなかった。
25年前にすでに飛んでいた。

縁とはこんなものか・・・