北帰行

流氷を見たくて冬の北海道に出かけたのが高校2年の冬。

毎日の昼飯代と日曜日のバイト代をコツコツ貯めた。
周遊券の冬割と学割で交通費は5000円、ユースホステルを利用して1週間全てひっくるめて15000円前後だった気がする。今思うと信じられない安さだが、それでも予算ぎりぎりの旅だった。

途中、札幌で山岳部の親友と合流し、1泊だけユースを共にした。
あとは一人旅だった。
親を安心させる為、二人で行くと理由にした手前の方便でもあったのだ。そのくせ現地で落ち合ったときの安堵感はたいへんなものだった。これほど人恋しくなったのも一人旅の仕業だろう。

残念ながら、流氷とは会えなかったが、函館、札幌、旭川、仙台とチンチン電車の写真を撮り歩いた。特に旭川は、廃止予定を知らないで数日前に出くわした。最北端の地に根付いた鉄魂に片鱗に触れることができた。

北風の吹く時期になると、「コトン、コトン」という北行きの線路の音が聞こえてくるのだ。