ここまで・・・

お店に出す商品は、極力自分が実験台になって様子を見たり、何より気に入ったものを選んで後に店頭に並ぶ。
つい気に入りすぎて、手ばなせなくなって並ばないものもあるのは困った傾向だと言えるのではあるが・・・

本当は経年変化を調べてから。という気持ちもあるのだがなかなかそこまで追いつけない。

その点、お客様はありがたい。
特に念珠は僕の専門でもあって、数年先に必ずお直しにいらっしゃる。
戻ってきた念珠をみると、たまに見るも無残な姿に変貌してしまったものもあるのだが、老いてなお闊達に頑張っている念珠を見るとき、なんとも言えない喜びが湧くことは以前から何度か書いてきた。

今日おみえになったお客様に依頼されて直した心経入りの腕輪念珠は、木としては硬い白檀材なれど、すでに変形していた。
磨耗による変形だ。

彫文字の芯はその輪郭部が立ってその周りは凹む。
○玉だったはずが五角形にも六角形にもなっていたりと実にユニークに変化する。
その変化が、お客様との縁の深さのような錯覚を覚える。

作りながら不思議な気持ちにさせられるのだ。