ポチ

早朝に一仕事で雷門あたりにいると、実に多くの犬が通る。
モモちゃんというメスの柴犬がやたらと馴れてくれた。

子供の頃飼っていた愛犬がポチ。
柴犬の雑種で実にかわいいやつだった。

僕の言うことはまったく聞かなくて、しょっちゅう脱走してのけた。時々は夜中に鎖をどういう手段でかはずしてしまい、逃げ出して子供を作って帰って来ることも季節の変わり目になると行事となっていた。

そんなときは、明治生まれの大家のおばあちゃんに見つからないように、貰い手を夢中になって捜した記憶がある。
何故ならば子犬が見つかれば、近くの川に流されてしまうと恐れたからに他ならない。

ある日予想だにしていなかった事件が起きた。
ポチが大きなお腹を抱えて逃げ出し、近所の家畜に迷惑をかけてしまったのだった。
ついに彼女は悲しい運命を歩むことになってしまった。

冊処分が決まった時、飼い主のふがいなさに泣きの涙で、犬は一生飼わないとポチに誓ったのだった。

そんな思いが柴犬を見ると頭をよぎる。

ふとしたことで、ポチに似たメス犬とじゃれあっている間になんで「ポチ」なんだろうと疑問がわいた。

調べた。

大辞林第二版

(1)小さい点。ぽつ。「文章の切れめに―を入れる」
(2)(京阪地方で)芸妓や茶屋女などに与える祝儀。はな。チップ。「―袋」
(接尾)指示代名詞や数を表す語に付いて、それだけの数量しかない意を表す。だけ。ぽっち。「それっ―のことで怒ってはならない」「これっ―じゃ足りない」〔上の語との間に促音が入って「っぽち」の形で用いることが多い〕 」

秋田犬や土佐犬と比べて小さい犬にポチをつけるような気がしなくもない。
少量(小さい)に対しての形容から来る名称と捕らえていいのかな・・・

なぞと、

調べながら・・・こんなことどうでもいいじゃん。
と、思い直し、また柴犬を飼いたいなとポチへの誓いを破りそうな自分に気がついた。