影ぼうし

昔から影って好きだったんですよね。

影踏みに興じていた頃の夕暮れに変化していく茜の空はなんとも言えずよかった。
影はどんどん大きくなっていき、のろまな弟をあざ笑う狡猾な姉の影も難なく踏めるようになる。

自転車で旅をしているころ、山道の夕刻と言うのは、迷ったり、道が荒れていたりで予定通り宿に着かないと、昼間は快適な林間コースであっても、かなり心細くあせるものなのだ。そんな時でも、数メートルにも伸びきった相棒の自転車の影を見ると、頼もしく思いながら追いかけて行ける。なかなかおつなものだった。

都会の雑踏も人人人で息が詰まりそうな空間であるのに、ふと目を落としてみると、朝の活力に満ちた影法師が、夕刻の赤い日に伸びた影法師が、時と場所を忘れさせてくれる。

どこに想いのチャンネルが潜んでいるかわからないものだ。

全てお日様のなせるわざ。

やっぱりお日様は偉いわ。