もう十数年お付き合いしている貿易業者さんが訪ねてくれた。
もう70歳をとうに越えて年齢的に言えば
「おじいちゃん」と言われる御歳になるわけだ。
しかし、口が裂けてもいえない。
タブーである。
それよりも何よりも、実年齢よりはるかに若い。
全く歳を感じさせない。
着る物も、ぼくと比べても、はるかに若くセンスのよさが光る。
なにより、さりげなく着こなしている。
定年までは、某テレビ局でチーフプロデューサーをやっていたくらいだから、
芸能人にも知り合いが多い。
そして何人ものスターを世に送ってきた人だから、
彼にとってはごく自然な姿なのだろう。
最近、大病を患い、いろいろ思うことがあるようだ。
今日は、いつになく元気がない。
そのまま帰らせたくない気持ちになった。
「じゃあね」と立ち上がろうとしたときから、
昔話のモードのスイッチが入った。
人生のドラマは、聴いていて楽しい。
どのドキュメント番組よりドキュメントであるし、
一回しか生きれない人生を倍にしてくれているような感触をいつも感じる。
気がつくと2時間近く話し込んでいた。
子供の頃に観ていた番組を製作していた父親のような人と
こうしてコンビを組むのだから、人生摩訶不思議さを感じる。