TONは、昆虫図鑑の大好きな少年だった。
あせもの攻勢に辟易しながらも、昆虫の溢れ帰る夏は大好きだった。

いつ頃からだろうか・・・
タガメやゲンゴロウに出会う機会もなくなったが、身近なものでしいて言えばクワガタやカブトムシさえも、今はゴキブリと同類項に見える。

好きと言う範疇から除外された。
今はあのかわいいカナブンさえあえて手を伸ばしたい衝動はどこかに消えた。

そうした思いに反比例するように、草木に愛でる気持ちが強くなった。

歳を重ねるたびにその度合いは強くなる。
これはどうしたことだろうか。

毎月の写経会に会員さんが用意する仏前の供花は、その後は僕の管理するところとなる。
洋花と和花が取り混ぜになって花立に収まり本尊前を荘厳してくれる。
花たちは日ごと枯れていく。
命あるものである以上仕方のないことなのだが、仲間が減っていくようで寂しいものだ。

まず洋花が消える根から切り離された洋花は朽ちるのが早い。水中にあってもドライフラワーになるのもいる。

が、和花は強い。

菊。

特に真夏、35℃を超える猛暑日の続く夏。
これほど厳しい環境にさえ。

水が腐ろうが、大輪を咲かせてなを頑張っている。
感動する。

つまらないほど小さなことなのだが、日々の中で感動を覚えるTONのだ。