父の日と聞いてふと思い出した。
僕の人生に母の日はあっても父の日が意識にのぼったことはない。
生まれて数年で先に逝ってしまった父はアルバムの中の空想の人。
仏壇=父であって、
何ら実態の伴わない存在でしかなかったが共にいた。
不思議と子供時代から、その仏壇のある小部屋、
といっても半畳の盲腸のような出窓部屋が
僕と父とを結ぶ唯一の空間だった。
どこの家でもやっていたことだが、
季節の初物やもらい物はまず仏壇に備えた。
なぜそうするかなど考えもしなかったが習慣だった。
そのうち盲腸部屋は、おやつを食べるのも、
マンガ本を読むのも、勉強をする時も、
内緒の宝物を隠すための秘密基地ともなっていった。
そのうち布団を持ち込んで・・・半畳にどう寝たのか思い出せないが、
ガサガサ小虫(ゴキブリ)の音も気にせずそこで寝た。
僕にとって、そこが我が家の仏間であり精神安定剤だった。
結局は、僕が「気が付こうと気付くまいと」、
歴然と父の懐で育てられ、心の状態も保たれてきたのだと今にして思うのだ。
今年は、ちょっとはよい線香をあげようか・・・
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