今朝店に出ると、懐かしい顔が目に飛び込んだ。
御歳90歳になるM氏。
店を創業して以来お付き合いしていただいているお客様だ。
「おはようございます。お元気そうですね」
僕が声をかけると、
「?」
不思議そうな顔をしている。
ちょっとあって、
「社長?」
「はいそうですよ」
と、ぼく。
「もう90だよ。歩くのも大変なんだ。けどここに来たくなっちゃってね」
まず自分が年取ったことを正直に吐露する。そういう人なんだ。
「みんなふけたなぁ」
で、これを言いたかったのだろう・・・
そういう人なのだ。
名古屋出身でその業界では一目も二目も置かれる重鎮なれど、実に気さくで会社が近くにあったときは毎日のように店に立ち寄っては訓戒してくれた。
商売はこうあるべきだよ。
こんなことをしてはいけない。
耳にタコができるくらい商売の先輩として教えてくれた。
ある日、若い時に新聞に取り上げられた記事のコピーを持ってきてくれた。
そこには僕と同じくらい若いM氏のやり手の経営者の一人として鋭い目をして写っていた。
その記事を読んで正直な感想を述べた。
感心してくれた。
一新参経営者としてのぼくを先輩経営者として見てくれた日だった。
付き合い方に微妙な変化がその日以来感じることができた。
もう二十年も前の話しなのだが。
彼の眼差しを見るとふと思い出すのだ。
これから何年お付き合いできるかわからないけど長生きしてくださいねと思いつつM氏の背中を追っていた。