「あたりまえ」

近くの仏壇屋の奥様と従業員さんが来店された。

目的は、弟子入りだ。
と言うのは冗談だけど、

念珠の製作方法を教えて欲しいと懇願されたのだ。

ちょうどお盆あとで客足もまばらだし・・・

「まあいいか」

と言うわけで、念珠作り教室を開いたと言うわけなのだ。

生徒は、同業者の仏壇屋さんといっても念珠つくりは全くの初心者。
糸のもち方から、伝えないといけない。

「教授するくらいは簡単なもの」と、高をくくっていたのだが…

いざ伝えようとすると、

人の体を動かすのは、なかなかままならん。
あれ?右だったっけ、左だったっけ…
どっちを通すんだっけ…
男結びは、こうだったっけ…

正に悪戦苦闘の連続。

四半世紀、念珠作りをやっていると、
脳みそを通さず、体が勝手に動いてしまっている。
いちいち考えていないということだ。

それだけに、
いざ、言葉に出して教えようとすると、

いちいち自分の手に問いかけないとわからない。

「左手さん、こうだっけ」
「右手さん、紐はこっちに向けるんだったっけ」
と確認しているのだ。

あまりにも当たり前になりすぎていると、
そのありがたみがわからないのだ。

考えると「あたりまえ」は、
身の回りにいくらでもある。

歩ける「あたりまえ」、
声を出せる「あたりまえ」、
食べれる「あたりまえ」、
大小便がだせる「あたりまえ」、
汗をかける「あたりまえ」、

人のいる「あたりまえ」、
空気を吸える「あたりまえ」、
水を飲める「あたりまえ」、
生きていられる「あたりまえ」、

・・・・

挙げればきりがない「あたりまえ」。

あまりにも当たり前になりすぎて、
忘れている。

けれどいざ「不足」になると、
「当たり前」が実は、
全く「当たり前」でなかったことに気づく。

「あたりまえ」は、あまりにも偉大だったのだ。

今日は、「あたりまえ」に、気づかせてもらった。

今日の浅草の空

今日も暑いぞーーー。
の予感。

地震もアリ、津波もアリ。
熱波もアリ。どうなっちゃってんだろう。

気象庁の発表する気温と現地点の気温は違うからね。
実際はもっと高いはず。

クーラー付きジャケットが欲しいところ。

雲はあれども…

雨は降らず。雷ならず。

朝の地震は、暑すぎて大地が悲鳴を上げたのだろうか。
あいにく、3や4の震度で目が覚めるほど敏感じゃないもの…
こんなこねくり回したような乾いた空を見ると
地震もありなんという気にさせられる。

悟り

朝、仕事を片付けに店に顔を出す。

昨日は昼過ぎから出かけていたものだから、
全てやりっぱなしのごーちゃごちゃ。
デスクの片付けと貯まりにたまった資源ゴミをまとめに
未明に出社した。

早朝にかかわらず、もう息苦しさを覚える。
熱気を避けるようにシーンとした店内に入る。

この時間の店内が、一番好きだ。

戸を開けて中に入ると、
昨日までの冷気が若干残っていたのか瞬間ヒヤッとした。

本当は、そんな冷気が残るはずはない。
いかに外気が常識を超える高温に達しているかなのだろう。

かび臭い外の匂いから急に清らかな空間に入る。

いつもなら戸を開けた瞬間に、
龍脳のスッとした香りが鼻に飛び込んできて、
気をシャンとさせてくれる。

けど、今日はいつもと違う。
全く違う。

何?
深炒りのコーヒー豆の香りが充満していた。
????

コーヒーのお線香が入荷したばかりの頃は
異質な香りが店内を占めたこともあるけれど…

今日は、まさしくコーヒー店に化けている。
しかも自前の焙煎をする洒落た店。

そんな感覚に陥るほど、香りが店内の隅々まで充満している。
何だろう…

あたりを見渡してみる。
小さな小包が仙台から届いていた。

お付き合いをしているネルソンコーヒーからの豆が
机の上にちょこんと乗っていた。これが原因か…

30坪の店内は、
たかだか、B5にもならないサイズの豆の為に
お香の香りも全く影を潜めていた。

すごいものだ…

小さくとも影響を及ぼせる、
存在感のある店になりなさいということか。

香りのお届け物に、朝一番悟らされた。


(注文したのは僅かなのにこんなに入っていたょ)

焼きつきました

ずいぶん靖国神社は騒がしかったようだ。

一度、この日に行ってみたかったのだけれど、
なかなか思うにまかせない。

お盆を意識して人も配置していたのに…
今日は、店内は閑古鳥が鳴いていた。
この暑さ、お客様も出そびれるよね。

あ!これなら、出られるぞ。
と思いきや、こういうときに限って仕事が舞い込むもののようで、
気付くともう1時をはるかにオーバーしていた。

朝、九段に行きたかったのに…
じゃあ西に行こう。

と言うことで、

店の備品を求めに船橋に足を伸ばすことにした。
表に出たとたん、
いやーーー溶けた。
もう…トロッっと溶けました。

昨日にも増して陽射しが差し込む。
チクチクしてくる。
ここまで来ると、かえって気持ちがいいくらい。
と言いたいが、

さっさと、車の中に逃げ込む。
けど、窓を開ければ、熱気で息ができない。

これは、まさしく地獄の火か…

終戦のこの日に、この火のような日。
はい。

しっかり身に焼きつきました。

暑さのかわりに…

浅草ではないけれど
夕日がきれいでした。

群馬では40℃を超えたという。
どうなってるんだろうね、この気候。

お盆

毎年8月は不思議な感覚にとらわれる。
お盆をはさんで、普段にないお客さまの来訪もある。

店が混むのは7月のお盆なので、仕事の感覚を離れて
少し客観的に見ることができる。
ただ、この月は普段とは感覚が、まったく違ってみえる。

口で表現するにはかなり難しいのだが、
しいて言うならば、
彼岸が近づくとでもいうのだろうか。
ご先祖が川のむこうから訪ねてこられる、
とでもいうことだろうか。

断続的に混みあう店内をよそに
毎年のように考えさせられるお客様の来訪が多い。

今日は、
代々霊を感ずるという母子の願いで、念珠を製作させていただいた。
僕には、そうした姿が見えるわけではない。

ここに入ると気が落ち着くと、
入ってこられたときの険しい顔が
みるみる表情を和らげられる。
小一時間話をされていかれた。

毎日、接客させてもらう方にこうした方が
必ずいらっしゃる。

川向こうを感じざるを得なくなる。

普段おろそかにしている

父の眠る仙台の墓に向かって祈りなさいと言うことか。

サーマインドの心臓部

もともと、
サーマインド用に製作した白檀プレート。
通常は、蓋はつかない。

香合仏の職人の手作りなので、
どこまで小さく、そして緻密にできるか
試験的に製作したのがきっかけなのだが…

開いた口が閉まらなくなる驚きの彫りを実現してくれた。

ミニ香合仏…いや、
超超ミニ香合仏というべき大きさに仕上がっている。

これこのとおり、超ミニぶりがよくわかると思う。


左から、通常の香合仏、手作りミニ香合仏、超超ミニ香合仏

縦21mm×巾16mm×厚み6.6mm 
重量1.1g