喜寿と塗香

昨日のお客様、77歳喜寿のお祝いのお返しにと、塗香(ずこう)と塗香入れを十数人分お求めいただいた。

商品を選ぶにも「見えないので手に触らせて」と初めて全盲であることに気づかされるほど若々しく、足元もしっかりされていた。

商品を包装している間、こんなエピソードを聞かせてくれた。

「以前殿方に塗香を差し上げたら、とても喜んでくれたのよ。
いい香りだと言ってずっとポケットに入れてくださっていた。

同じものを何人かの若い女性にお見せしたけど、「なにカレーみたいな匂い!」って毛嫌いされたの」と笑いながらも日本文化の衰退にやや危機を感じ気を落とされていた。

「眼が見えないってことはいいこともあるわ」
片目の僕には奇異に感じ聞き返した。

「眼が見えないと自分の老いた姿を見ることもないし、耳が眼の代わりになってくれて相手の心が読めるようになったのよね。人間の体って凄いと思ったわ」

さらにこうも付け加えてくれた。
「全盲のお友達が道案内してくれるのよ。そこ危ないよ。もうすぐ右に曲がるよ。とかね。どうして解るのかしらと思うけど、にわかめくらの私には解らない五感をお持ちなのよね」

と、微笑みながら応えてくれた。

僕は、(いえ。あなたの心はもっとすばらしいですよ)
と心の中で応えていた。

意外・・・

十一面観音経。

お客様からのご依頼で、急きょ探しまわった。

訓読の経典はあるのだけれど、真読(漢字読み)の経典が見つからないから探して欲しい・・・・と。

聖天さまを信仰しているのかと思いつつも、調べてみると・・・

これが案外厄介だった。

「読み下し文(訓読)でしか十一面観音経はつかいませんよって」
どこの版元もすげない返事。

ようやく一軒だけ見つけることができた。

「在庫ありません。いつ作るかわかりまへん」

とまあこんな様子でまったりした答えしか返ってこない。

相手は急いでいるのだからとかき集めてもらってなんとか事なきを得た。

でも、しかし、つい先日も同じような心持をした記憶がまだ消えていない。
大日経を探しておられたお客様のご依頼で、探したことがあった。
しかし、空手で終った。

金剛頂経も大日経も同じ状況で、大事な経典にもかかわらず廃盤の憂き目に会っているのだ。
「今は読まないから」

なのであった。

はからずも手元に大日経の住心品だけは自分の勉強と思って昔とっておいたものがあったので、その版元から入庫できたが、風前の灯である。

在家経典の一般本があれば、極力版は減らす傾向にあるのだろう。
版元の気持ちも解るにはわかる。

けれど、それでいいのかな・・・
ちょっとばかり疑念が生まれてしまうのだ。

メジャーではないが、必要とする人がいる。
釈迦の言葉を探す人がいる。
しかも以前は確かにあったのだ。

効率と言うことの前に、大事な救いの「言」が消えてしまうことなのではと、言い過ぎというならば、必要とする人の目から隠れていってしまうことなのだ。

TONにはちょっと解せない。

正直な気持ちである。

念珠堂ナウ

今日は御用始めの。

と言ってもまだ松の内。

浅草は混んでいます。

店内はこんな状態。

外もこんな様子です。

そうそう。
交通情報です。

都営地下鉄浅草駅の改札を出られたらくれぐれも、駅誘導員のアナウンスに惑わされませんように。

「3番出口4番出口は混んでいます」
とさかんにアナウンスしています。

通常4番出口が観音様への出口です。
3番は駒形橋には便利ですが、観音様へは遠くなります。

正月になると、はるか遠くの出口をアナウンスして誘導しています。

でも4番の出口前が歩けないほど混み合うことはまずありません。
そなになったら、商店主たちがまず悲鳴を上げます・・・

迷子にならないためにも、4番出口を使ってくださいね。
(せめて念珠堂のお客様にはご不便をおかけしたくありませんので)

気持ちいいねぇ

昨夜は雨が降ってきて、

あらら・・・どうしましょ。と思いました。
まさか由紀は振らないとは思うけど、こればかりは天の神様の言うとおり・・・
ののであって、ずっと以前、三が日を過ぎたとたんに大雪。という年もありましたっけ。

麻のうちは、重苦しいとまではいかないけれど、曇り空で寒いとくると、人の足を鈍らせるので心配していました。

お昼を過ぎると・・・

ピカー!
出た。顔をのぞかせてくれたお日様。

あ~~ありがたい。
つい手を合わせたくなる、お日様の光です。

「人は自然に逆らえない」

今年初めの悟りでした。

お店ナウ

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

念珠堂は元旦から休まず営業中ですよ。
早速、いらしてくれたYさん、仏像をオーダーいただいているけど、なかなかTONの気に入った彫りにならなくて、何年越し?の待機でしょうか。
待ちきれずにご自分で彫りだしいてしまったとか・・・・

わがままな店主ですいません。
TONが気に入らないと仏師に還してしまうので・・・・

とそんなことを立ち話の小一時間。


龍神さんもこのときばかりは、見付けに陣取りました。

人が増えてきました。

スカイツリーをバックに写真を撮る人の多いこと。

念珠堂発の人力車。
どこへでも行ってくれます。

横浜まで言ってくれる?

ちなみに、昨晩の除夜の鐘後の雷門前の状況はというと・・・・


左側の列はぐるーっと回って右の列につながります。

以前は、駒形橋までまっすぐ行列を作っていたのですが、江戸通りを越えてしまうほどだったからこうなったんでしょうね。人がようやく浅草に帰ってきてくださいました。

青い目の阿弥陀さま

TONが作業をしているすぐ脇には試作品を兼ねた仏像が並んでいる。
残念ながら売り物にならないものも含まれているので値段をつけていない。

が、そういうものに限って販売していないのと聞かれてくる。

作業に没頭していると、視線を背中に感じる。

ちらと見るとTONを覆い尽くすような大男がジイーーーーと仏像の棚を見つめている。

どうやら外人さんのようだ。

視線から察するに
弥勒菩薩をお気に召したようだった。

しばらく沈黙。

静かな空気。

「これいくらですか?」

案の定、的中。

「ごめんなさいこれは無理なんです」

えらく残念がって、それでもじっと見ている。

TONが口を開かないから、他の棚に目を移すようになった。
八体仏の棚をじっと見ていたが・・・

暫くするとまた背後に視線。

あきらめきれないのだと言う。

さすがに申し訳なくなって、世間話をする。医師が自分の仕事で14年日本に住んでいる。
だから、ニッポンゴぺらぺらなんだ。。。

話のついでに四方山話しをさせてもらった。

念珠堂が位置するこの土地が、1300年の昔、現在浅草寺に祀られている観音様を最初に祀った場所で、その後移動して現在の浅草寺の場所に移ったこと。本尊がいなくなったここ場所には、阿弥陀如来が祀られて大勢の信者さんたちがお参りに来られていたのだと話すと目を輝かす。

16800円の安価さを
八体仏に使っている仏様は安価にまとめて入るけれど、しっかり彫っているんですよと話すと、また目を輝かせてくれる。

「八体仏ってなんですか?」と質問されるので、
「誰もが生まれ年によって縁のある仏様があるのですよ」

と説明するとまた目がピカリ。

「縁」がわかるんだ。この外人さん・・・

「ぼく、なんだかこの仏様さっきからピンときていたんです」

ほっほう・・・・
ますます驚きの心の声を発するTON。

喜んで求められてお帰りになりました。

感受性の豊かさに阿弥陀様もニコニコしていたのじゃないのかな。
そう思うTONでした。

お駄賃

お駄賃をお客様にいただきました。

親切にしてもらったから、僕が彫った物だけどね・・・

と、ショルダーバックをゴソゴソ探って手渡してくれた。

南天の木からお地蔵様を浮かび上がらせた。

長野の渡辺様ありがとうございました。