パイロットランプ

僕の店は路地に面している。
いつも店の位置を説明するのにとてもしづらい。
都営地下鉄をご利用いただければA4出口前と簡単なのだが、
車でこられたり、出口を間違えられるとちょっとややこしくなる。
今なら携帯電話で話しながら説明できるが、
公衆電話の時代はそれはそれは、お客様にご不便をかけた。

ここに店を出す時、実は迷いに迷った。

バブルの影響で物件は雨後の竹の子のように新築ばかりで、
あちらこちらに適当な物件はあった。

地下鉄の出口に近いが路地で天井の低い今のビルより、
大通りに面して車からも一目でわかる大きな物件に実は注目していた。

天井も高く広くて仏壇も充分置けるスペースが確保できるのが魅力だった。
当時は仏壇などの大型材に力を入れていたから、ほぼこちらに決めていた。
大手デベロッパーのテナント募集だった。

コンタクトを持とうと電話をかけると、足元をみるような返答だった。
資料だけは送られてきたがあとはなしのつぶて。

二度三度と連絡をするが、いつも一方通行で、連絡をもらいたいと、
ことづけていても電話ひとつこない。

鼻っ柱は強いほうだから、借りる側が何で日参するの?と、その気が萎えた。
数回の交渉で相手の姿勢に嫌気がさして、責任者が訪ねてきたがお断りした。

路地に面してはいるが、ほどほどの大きさの今の店に決定した。

ビルオーナーは、ぼくがやっていた以前の店に密かに訪ねていた。
店員や店のあらましを調べていたらしく、すぐに快諾の連絡をもらった。
「あの店なら安心だ」そう評価してましたよと仲介者が教えてくれた。
そのオーナーも故人となってしまった。

仕事に慣れが入ってくるとこんなことを思い出す。

見つけた香の記事

日経7月26日付

文香のことが特集されている。

かくゆう僕も名刺を交換させていただくと
「いいにおいがする♪」
と決まって言われる。

意識しているわけではないのだが、机の引き出しの中に入れている龍のうの香りが蒸発して香りがついたのだ。

変なにおいを意識的に使うよりよほど「味の良い」香りになる。

店にも文香と称して香りの栞や、印香といって干菓子のような香りのワンポイントをご用意はしている。

ちょっとした、いやみに思われない心遣いが「香り」には隠されているような気がする。

しかも、記憶の貯蔵庫である海馬組織にダイレクトに届くというのだから
こんな洒落た心遣いはなかなかないだろうと一人悦に入る。

朝の番組でもこれから儲かるユニフォームの話しとして
「香り」がキーワードとしていた。
まあこの場合の香りとは、消臭するユニフォームということだったが。

とにかく香り関連商品の一角を占める。
つまり五感の中で一番開発の遅れている分野である
お鼻にまつわる感覚はまだまだこれからやることが多そうである。
奥が深いぞ・・・。