気付きを与える

木鉦という仏具がある。
日蓮宗で使用する木魚のような仏具。

叩くとカンカンと甲高い音を立てる。
力強い日蓮宗の勤行にさらに拍車をかけるハイな音が売りの仏具である。

数日前にお買い上げくださったお得意さんのkさんが、音がおかしいよ。
と、お持ちになられた。

Kさんは、「木目の向きがおかしくない?」という。

よくよく見ると、音のよい木鉦は打つ面に対し木目が平行方向になっている。
なのに音の悪いものは、木目が直角方向になっているのだ。

つまり、木目を打っているようなものである。
木場を叩いても音は出るわけがない。

明らかに木取りの製作ミスだ。

「ごめんなさい。お取替えします。」
担当者と僕がKさんに謝ると、思いの外の答えが返ってきた。

Kさん曰く。
「ぼく自身、当たり前なことを当たり前なこととして押し通しているかもしれない。
きっとそれを教えてくださる反省材料なんでしょう」と、自戒を促すため出あわせてもらったと喜んでおられる。取り替えるなんてとんでもないということなのだ。
新たなものは持っていってもらいはしたが、自戒の木鉦はKさんの宝物となった。

さらに、
「これは叩く木鉦ではなく、見る木鉦なのです」
ともおっしゃった。

気付きを与える仏具・・・

腑に落ちた。

群雄割拠

浅草に来られると、雷門を目指してどなたも足を向ける。

見覚えのある赤い大提灯を見つけるか見つけないかしていると
「どちらにお出かけですか?」
「浅草は広いですよ!」

と、スポーツ界系ののりで、若者が近づいてくる。
ご存知名物のひとつになった人力の車夫である。

最近は、京都、津和野、鎌倉、倉敷、函館・・・
全国津々浦々どこでも見られる光景である。

ここ浅草では始め2人の車夫から始まった。

一人は友人でもある講談人力車と銘打つ岡崎屋惣次郎さんと
全国規模でチェーン店化しているえびすやさんの車夫である。

そのうち浅草神社御用達の浅草時代屋さんが増え、大手をスピンアウトした個人営業の松風さんが名乗りを上げまた一社増え雷門前は、
さながら江戸時代の旅籠の客の引き合いの如く様相を呈してきた。

早春には、雷門通りに日本で始めての、人力車レーンなるものも設置された。
からくり時計前の広場を人力車が占有し歩行者の迷惑になってきたからである。
度を過ぎれば五月蝿くなるのである。

かといって、定着してきた人力文化も捨てがたい魅力でもある。

昨日からこんな人力車チケット売り場なるものが登場した。

明朗会計はよいのだが、一社専用の売り場であったのが惜しいと思った。
同業者に聞くと、寝耳に水のことだと幾分か戸惑い気味。
そりゃあそうでしょうね。
知らない観光客は、ここでチケットを買うものだと勘違いするだろう。
価格も様々な人力が4社もあるなんて気が付かないもの。
俄然一社に軍配が傾きかねない。

鍵盤のような協同組織が運営しなかったのだろう。
キャッチセールスのような客引き合戦にうんざりする声もある。
せっかく人力車レーンまで公共の道路を割いて作ったのだから、
何とかならないのだろうか。
観光客の立場からもよいのに・・・と思う。

願わくは、岡崎屋の彼のように、心底浅草を愛し、
腰かけ同然のアルバイト車夫ではなく、
(彼は10数年前にプロ車夫を宣言していた)
一生の職業として「俺が一番」浅草の裏も表も知り尽くしている車夫に
なってほしいものだ。

こんな夢ばっかり・・・

夢の話し。

旅先で精密検査を受けている。
歯科だか耳鼻咽喉科の検査だかで口をあんぐり開いてもいた。

そのくせ不真面目にも、ぼくはガムを噛みながらいたのに、
そのまま脱脂綿を突っ込まれ、検査されるのだ。
ドクターがあっちを向いている間にガムを口から出そうとするが、
すぐに振り向いてしまう。

ぼくがそんな苦労をしているというのに、同じ室内では、
宴会が始まっているようで、知ってる顔もあり、
初対面の顔もあり4、50人が集まってワイワイやっている。

「あ、僕も参加したい」
早く終わらないかな。そう思うのだ。
しかしドクターが田舎育ちののんびりした人のようで、
なかなか先に進まない。
そうこうしているうちに・・・

突然
「結果が出ました」とドクター。

あれあれ?
CTの結果とか壁に張り出してる。
?そんなのやってないじゃん。

酒宴の皆は注目しているが口は止まない。
ドクターは何か言っている。
僕の耳にはうるさくてよく聞こえない。

「オー」歓声が上がる。
聞こえないっツーの!

そう思いながら目が覚めてしまった。
結果が気になる。

石にかじりついてでも結果を聞けばよかった・・・

仕立替え

もともとは曹洞宗のオーソドックスな本連。
すなわち、茶色の正絹紐仕立のあっさり型です。

それをお客様のご希望で、ちょっとお洒落に正絹松房の仕立に変更です。

中糸を通して正絹糸を束ね編みこみます。
ここまでできれば90%終ったも同じ。

そして、房をつければ完了。

松房にも、ここにある撚房(よりぶさ)と
昔ながらの切房(きりぶさ)という方法で房を作る場合もありますが、
現在は丈夫な撚房がほとんどです。

で、完成!

だいぶ表情が変わるでしょ。