いらっしゃいます

お客様のご依頼で、だいぶ前に製作した。

当時は、まだ歓喜天(かんぎてん)の役割をあまりわからぬまま
製作させてもらった。

が、大変重要な仏様と後に知って、
造ったはいいけれど…

となっている。

作るのはいいのだけれど・・・

まずこの写真をじっくり見てもらいたい。
持ち込まれた水晶玉を使って製作したものだ。

お気づきだろうか。

一見して、つないだ玉が、
九十九折れになっているのが判る。

玉の状態を見る限り入手先は海外。
お土産屋で、「お兄さんちょっとちょっと」と片言の日本語で、
「水晶、水晶」「安いよ」

すると、
「ん?水晶?これは安い!」
と思われて、衝動的に求められたのだろう。

現地のものは細い化繊の糸に仮通しされて500mm、600mmと
いうような長さに調整されて売られているはず。

それを本連の念珠にするなら何本と計算して
2~3本買ってこられるわけだ。

日本で買えばウン万円するから、
「これは安い」

人情だろうなあ。

けれど、いざ本仕立になると、それなりの糸を通す。

すると・・・
玉穴にきっちり通った中糸は、

玉穴のゆがみをものの見事に表現してくれることになる。

それが、この写真なのです。

気にしない人は気にしなくてよいのだろうが
僕は気になって仕方がない。

よく見ると、玉の直径も0.5~0.7mm違う
玉穴も、0.4~0.5mm程度誤差がある。
糸を通すと、ばっちりわかる。

これで仕立てて、何年もつかな…と思うと
とたんに手が進まなくなってしまう。

だから、最近は、「作っても、もちませんよ。すぐ切れますよ」
と言うことにしている。
本当は、どうするの?と言いたいのだが・・・

念珠は、プロに任せて欲しい・・・

という気持ちと、

価格の違いはちゃんと意味があるんよ。

と言いたいところなのだ。
けれど、「自分にも説明責任があるよな」と、
自戒も湧いてくる。

さあ頑張って、切れにくいように仕上げるとしよう。

新作二点

木へんに鬼と書く、槐(えんじゅ)
古来より、魔よけの木として珍重されてきました。

過去、本連念珠としては何度か制作しましたが、
不思議と腕輪はありませんでした。

今回、お客様のご要望もあって初めて作ってみました。
落ち着いた風貌があって、なかなかいい感じです。

同時に鳳眼菩提樹の小玉もアップ。
以外に少ない鳳眼の小玉。
流通しているほとんどが10mm以上のものばかりですから、
大事にしてもらいたいなあ。

http://www.hana300.com/enju00.html

写経

ホームページにこられるお客様の解析をしていると、
キーワードで写経が多いのに驚く。

少し前は、念珠や数珠が大部を占めていたのに・・・

写経がマスコミにもてはやされて、
さかんに、雑誌や新聞に取り上げられたのは3年位前のこと。

表向きの流行が過ぎると、マスコミは、見向きもしなくなった感がある。

が、どっこい違うんだなあ。

盆提灯を見ると思い出す。

盆提灯に明かりが入ると
夢幻を感じる。

と同時に、「ほっ」と、僕の心が一息入れる音が聞こえる。

癒される。

この仕事を始めた頃、ある出逢いがあった。

仕事一筋の男性だった。
お仏壇を購入してくださり、お伺いすることになった。

その方は、奥様と二人暮しだった。
ただ、人と違うのは、奥様は意識がなかったということであった。
仕事一筋の企業戦士だったご主人は、
家庭を顧みる余裕すらない中、奥様が、家を切り盛り
典型的な企業戦士の家だった。

ある日、その奥様が倒れられた。
会社を辞め、自宅療養を余儀なくされた。
そんな時に出逢わせていただいたのだ。

初めて伺ったときも、寝たきりとなられた奥様を
かいがいしくも一人で、お世話されていらっしゃった。

二度目の訪問時は、仏壇を納めたとき。
同じような光景を横目に見ながらも
なにより意識のない奥様の下の世話までなさりながら、
ご主人は嬉々としてお世話をされていた、その働きように
心底感動した。

その数年後、
あまりにも急な昇天であった。

弔問にお伺いした。

内心、大変なお勤めから開放されたことで、
多少はホッとされていらっしゃるのでは?

などと、心のすみに思いを持っていた僕は、
心から侘びを入れなければならなかった。

正直、恥ずかしかった。
認識を改めさせられることとなった。

ご主人は四十九日間を文字通り「裳」に服しておられた。

線香を24時間いや、49日間切らすことなく焚き続け、
家を空けることはなかった。
天国の妻に聞かせて上げるのだと言い、
仏教書を読みふけっていた。

そんな薄暗い部屋の中に、
霊前灯の明かりが薄ぼんやり周りを照らしていた。
印象的だった。

亡き妻に手向ける夫婦の絆を見た。

励まそうと訪ねた僕のほうが、胸を熱くさせられ、
ひとつ灯火を持ち帰ることとなった。

盆提灯

ようやく盆提灯が店頭に並んだ。
いつも遅れに遅れて、
6月の中旬以降と言うことが多かったのだけれど、

今月は、何とか…曲がりなりにも…
僅かなりとも…
第一日曜前の展示に間に合った。

5月中旬にはお客さまが、
盆提灯の確認にいらっしゃるのだから、考えると遅いくらいなのだ。

年々仏壇店から消えていく盆提灯。
ホームセンターやデパート、人形屋など販売チャンネルが増えているから、
以前のような勢いがないからなのだろう。

けれど、仏壇店が先祖供養の専門家なのだよと考えると、
店頭から消えることは、意地でも続けて欲しいのだ。

感動

お客様に心配りするのは、
商売の基本中の基本。

じゃあ、お客差に心配りされることは・・・
言葉が出なくなる。

感動(涙)さ。

お直しのご依頼をいただいて、念珠が届いた。
何日か前のこと。

今日、お直しが終って、返送する為に改めて、
同梱されていたお手紙を読んでいると、

便箋の挿絵かと思っていたそれが。

本物の桜の花だったことに気づいた。

ボンドで、便箋に貼ってくださっていたのだ。

そんな心使いが、本当に心に沁みた。

学ばなきゃあ・・・な。

僕へのごほうび

というのは、冗談なのだが・・・
平玉は自分の腕に留まっていた事がない。

生命樹も右に同じだ。
製作依頼は、よくあるのに、
触感を自分が知らないのは情けない。

ということで、こうなった。

彫り玉も使用していくとどうなるか、
その状態の変化を調べたいのと、

まあ…何より、龍が好きであることに他ならず、
ということで制作してみました。

親玉には、竜彫り14mm玉を使用し、
6mm玉に梵字の大日如来を二天に使用。
いずれも本水晶。
主玉は、生命樹の平玉54玉で仕立て。
ブラスト加工なので、龍も深く彫りこまれている。

(梵字はレーザー彫り)

さて、ひと夏越えたら、どう変化するかな・・・
中糸に使用しているシリコンゴムの状態もどうなるものか、

楽しみです。