あれから8年

東日本を襲ったM9の大震災は商店会を設立してちょうど2年目にやってきた。

商店会の通りを参道としての体裁を整える工事として、敷石を引き詰め、高速道路かと見間違う味気ない街路灯をLEDの装飾街路灯に取り替え、やれやれ一息を付いていた。
このの冬はイルミネーションで、多くの方々をあっと言わせたいと思いない知恵をしぼりながら企画していた矢先の大災害だった。

イルミネーションのために用意していた予算は会員の承諾を受け、そのまま被災地への援助金に回してしまった。
人伝えで大船渡小学校に手渡すことができた。

夏場近くにひょんなことから東京藝大デザイン科と繋がり、彼らが愛情深く真心込めて制作していた、歌川国芳ばりの猫の化身、大化け猫のモニュメントを商店会として譲り受けることとなった。化け猫転じて福の神にしようと決めた。芸大の学生たちは五右衛門と名づけていたが、僕はご縁を生み出す福の神だから「御縁門」と命名した。


しかしあまりに大きすぎて通りに設置する場所が見つからない。

そうだ!東北行こう!

大猫なら猫の島の守り神にしてもらうことがベストなのではないかと会員と話し合い、被災を跳ね返そうと頑張っておられた石巻市の洋上に浮かぶ島、田代島、別名猫島に運ぶこととを決心した。全く手持ちはなかったが・・・

あまりに大きすぎて通常のトラックでは無理とわかる。
ちょうど会員の持ちビルの立替工事中で重機を回送する10トントレーラーを格安で叶うこととなった。

有志の手弁当と喜捨によって猫島に安置し、そしてその足で大船渡小学校へ追加の支援物資を運ぼうじゃないかと計画を練った。正直なところガソリンが心配だった。道路が心配だった。宿が心配だった。食物が心配だった。もろもろ心配の種は尽きなかったがエイ!とばかりに出かけることとした。

大化け猫は浅草神社の境内に出発まで祀られ、お祓いを受け清き御霊となった。
しかし、よくまぁ神社が受け入れてくださったものだ。
ここでまた神社とは浅からぬご縁をいただくこととなったのだから、本当に縁とは不思議なものだと思う。

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神楽殿横で祀られて、出発を前にぐるぐる巻きにされた御縁門。

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そしてちょうど8年前の昨日、ご縁門はトレーラに乗せられ夜の東北道を北に向かった。
石巻手前で一般道に降り人気の全くないバイパスを石巻に向かう。


しばらく走ると潮とヘドロの混じった匂いが鼻を突く。いよいよ被災地に足を踏み入れた実感の中、少し前までは閑静な住宅地だっただろう荒涼とした区画の中にも人気はまるでなく、改めて胸を締め付けられた。河口近くの人気のない市民病院近くで野営するもゾクゾクして疲れているのに全く眠りに付けなかった。

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朝目を覚ますとどこまで深いかわからない潮だまりがあちこちにあり家の抜け殻もあちこちに点在。

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本来はここからフェリーが出たらしいが、被災していて桟橋は移っていた。

そんな被災地入りで始まることとなった。

今日は猫島行きのフェリーで島に渡り、被災した惨憺たる島の状況に全員が思い知らされた日だ。

御縁門を猫島に運ぶプロジェクト