これならいいかも

全く知らない赤の他人でもサイクリストと見ると何の抵抗もなく話しかける。
これが同じ趣味に生きている者の強みである。

観音通りを浅草寺に向かって歩いていると三人の若者が二台の自転車に別れて乗っているのを発見。

三人が二台??。

ここがみそである。
つまり一台は二人乗り用の自転車(タンデム)であり、マニアックにもダブルタイヤになっているのであった。

しかももう一台は、こんなにも先鋭的な形のものだった。

「オーダー?」

脳ミソを通過しないまま口が先走った。
若者は一瞬いぶかしがるも、明るく答えてくれた。

「いえ、レンタサイクルです」
へ~~。こんな形のレンタサイクル始めて見た。

「どこからこられたの?」

「神戸からです」

また軽快に応えてくれた。

レンタサイクルと言えば、せいぜい軽快車どまり。
つまりママチャリの域を越えない生活観どっぷりの自転車がせいぜいだと思っていた。

目の前の二台は、その既成概念を見事に壊してくれた。

こんな面白い車なら、乗ってみたいと、地元のTON店長ですら思う。

「スカイツリーはもう見たの?」

「まだです」
きっとこれから向かうだろう。
なんたってもうすぐ日本一高い塔になるのだから。

ただ、背の低いこの自転車であそこまで行くのかな・・・
ちょっと心配にもなった。
寝転ながら運転する自転車は車高が俄然低くなるから、自動車の運転手からはかなり見づらくなるだろうから。

「じゃあ気をつけてね」

「ありがとうございます」

ちょっとした会話だったが、観光都市宣言をした東京都や台東区の交通事情を考えると、申しわけなさと、いささか不安を感じるTON店長でもあった。

完成すればスカイツリーは間違いなく人を集める観光スポットになること請け合いである。すでにツリーの足元は観光客や写真オタクで普段の日からいっぱいになっている。

浅草はもちろん現時点ですら観光客が溢れていて通常の歩道幅では人が通りにくいこと通りにくいこと。
催事や祭りともなれば、歩道などあってないがごとくの状態になる。

スカイツリーが完成したとき、隅田川を挟んだ一キロのこの距離を、既存の交通機関だけを頼りにするのだろうか。
バスや電車だけでよいものだろうか。

この区間は、きっと一級のプロムナードに変貌することだろう。
散歩道だからこそ、歩く視線と移動時間だからこそ味わえる風の臭い、四季の風景、移ろい変化する醍醐味。

どうだろう・・・

レンタサイクルは墨田区の石原にあったと聞いた。
もしかしたらあの歩道を走ってきたのかな。
狭いスペースを歩行者に気遣いながら・・・

それとも我が物顔でトラックが疾走する蔵前橋通りや三つ目通りを抜けて浅草まで走ってきたのかな。
思うとかわいそうになる。

一体全体、自転車はどこを通ったらいいのだ。

スカイツリーはまだ見てないの?
問いかけた自分にちょっと後悔する。

だってあそこに行くには、車の往来の激しい言問通りを通っていくことにもなる。
車の少ない裏道をちゃんと教えてあげなかったんだもの。

そんな心配ご無用の道路事情にいつになったらなるものだろうか。

そろそろ自動車優先の道路政策の舵取りに変化が起こらないものだろうか。
変化を求めて止まない。