おばけ煙突

ぼくと同世代(昭和30年代)以上の方なら
まず覚えていらっしゃるだろう。

横浜に住んでいた子供のころ
おばけ煙突の話題はよく出た。

「おばけとは一体なんだろう?」と
子供心にその正体は奇々怪々であった。
おばけのように、消えたり現れたりとするものなのか、
誰かを化かすものなのか・・・狸じゃああるまいし

テレビだか映画の合間の日本ニュースだかで
はじめて、その威容に触れた。

「なあんだ。ただのでっかい煙突じゃあないか」
当時は、風呂屋の煙突も乱立している時代。

でかい煙突は、まあ見慣れた光景ではあった。

しかし、それでもでかかった。

見る角度によって、4本、3本、2本、1本と変化する。

子供心に不思議で不思議でならなかった。
そのうち本物を見ることもなく
取り壊されて、記憶からも消えていった。

浅草文庫のあるテプコ浅草に寄り道中
二階に上がると突然、
ふるい記憶の主に出逢うことになった。

それがこれであった。

4本に

3本に

2本に

1本に

ほー こういう配置だったのだ。
模型でようやくなるほどと理解できた。

45年目の理解である。

本物は、黒々と天を突き抜ける威容…異様さで
おどろおどろしく見えた。気がしたが…

千住火力発電所という。
下町っ子は、生活の一部のようだったんだろうな。