ゆめ

夢をみた。

小学校3年生のときの担任のN先生の子供に涙ぐみながら依頼された。
「父は非業の死をとげたのです。
その思いを解決して下さい」。

N先生は、元特攻隊の変わり者だった。
母と同じ年のはずだから、志願兵でぎりぎりの出陣だったことになる。

沖縄戦(だと思う)で途中エンジン故障のため引き返し不時着し、そのまま終戦となり九死に一生を得た(無念の涙を呑んだ)。
復員し、代理教員となり国語の先生になった。

結婚したが子供に恵まれず、その愛情を余すことなくぼくらに振り向けてくれた。

熱血教師は、軍隊式だった。
宿題を忘れた、間違ったことをした等と言うときは男も女も差別なく、即ビンタであった。
僕は何度そのグローブのような平手を食らっただろう。

バケツを持って廊下に立たされた。

忘れ物をすれば、走って取りに行かされた。
職員会議で何度もつる仕上げをされたと後で聞いた。

じゃあ、よほど恐怖教室だったかと言えばそうではなかった。
休み時間には生徒の中にいつも溶け込んでいた。
生徒の話に反応して猿のような赤ら顔をさらに赤くし、細い目を目をくしゃくしゃにしながらいつも笑っていた。
子供たちは、畏れながらも先生の愛情が充分わかっていた。

帰り間際になると、教員になって覚えたオルガンを楽しそうに弾きながら、
「お山の杉の子」の歌を「昔々その昔、しいの木林のすぐそばに♪」と合唱した。
いつか会いたいと思っていた。

その娘の頼みである。
「父の非業の死」・・・何だと言うのであろうか。
彼女の口から事情を聞いて七つ整合性が取れない話を確認した。
僕が指を折りながらもう一度復唱したところで、
「チン♪」という甲高い音で目が覚めた。

息子が夜食がわりに牛乳を温めた電子レンジの終了音だった。
本を読みながらいつの間にか転がっていたのだ。

「あやつられた龍馬」「幕末維新の暗号」と謎めいた本ばかり読んでいるから、そのストーリーに染まってしまったのかもしれない。

もう一度寝ようと横になりはしたのだが、ふと思い出した。

恩師は、50を間近に念願の子宝を授かった。
女の子だった。
鬼が神になったと風の便りに聞いた。

一人娘。ぼくよりもちろん年下。
おや?そっくり当てはまるではないか・・・。

目が冴えて眠れなくなってしまった。