それでもなお

20年来お付き合いのある問屋さんが閉店間際に飛び込んできた。
今日来店するとのアポイントもなかったからちょっと驚いた。
もっと驚いたのは、いつにもなく雄弁であって、切り口上であったことだった。

昭和一桁だし耳も遠くなったから声のでかいのは仕方ないにしても

「もう仕事辞める」
という。

80歳近い歳になって、仕事を受けるため人間関係を保つのに疲れたと言う。

「80歳近くて仕事ができると言うことはそれだけでも感謝でしょ。」
僕が言うと、知らん振りしている。

閉じた耳には届かなかった。

「でもここに来るとホッとするょ」

少し気を楽にして帰路に着いた。

いつか見た空

去年の暮れに足の骨を折った粗忽息子の足に埋っている金具をとるための再手術の打ち合わせに、朝一で赤羽の病院まで付き合わされた。

赤羽はやはり遠い。

半年振りの病院は8時の開始時間にも関わらず超満員状態でほぼ半日つぶれてしまった。

とにかく時間が有り余るだろうと、昨日買った船井幸雄の「資本主義の崩壊最終ラウンド」という本を持って行ったが、意に反して半分の時間は爆睡して過すことになってしまった。

8月の上旬に手術と決まって、愚息はため息を漏らしながら肩を落としていた。

きっとこんな心境かも・・・