仲の良い老夫婦と思われるカップルが来店された。
見るからに人の良さそうな好々爺。
聞いてみると、お寺の勤行で偶然隣り合わせた二人なのだったそうだった。
「すっかり意気投合してしまいましてね・・・」
笑みを隠しきれずすっかり相手を信じきった表情のおじいちゃん。
きっと途中でお茶でもしてきたのかな。
いつものことのようにちょっと高いお香を手にして清算された。
おばあさまも、あたしもと言わんばかりに同じものを手にした。
「あ。いいよごれもご縁だから買ってあげるよ」
「悪いわあ」と言いながらもちゃっかり清算させる老婆。
「じゃあね」
店の外で二人は左右に別れていった。
ほんの 1分もたたないうちに老婆は戻ってこられた。
「私、仏壇ないから返品していいかしら」
唇も乾かぬ間に・・・・と言うけれど、乾かぬもなにも・・・
唾も地面に落ちる前にくらいのすばやい変心に、店の一同は顔を見合わせた。
「私も欲しいわ」くらいのタイミングで相手に買わせて即換金してしまう。
あんなに仲良さそうに振る舞っていたのに、いやなら始めから断ればいいのに・・・
いやいや・・・・
はじめから小遣い稼ぎにされたかな・・・
と僕の思い。
こんどこんなことがあったら、追いかけて説明してあげなくちゃ。
「もしもし、ご友人は仏壇ないので必要ないからお金お返ししますね」・・・・と。