だいぶ年季の入った腕輪を預かる。
「ゴムが伸びてしまったから替えて」と言うこと。
よく見ると、七福神がバラの木に彫り込まれた、わが社の念珠に他ならなかった。
像の彫りこみの角はきれいにR(丸み)をつけていて手にし易そうな、ふくよかな形状に変化していた。
垢のたぐいも見あたらず、大事大事に使われてきたことは一目でわかる。
尋ねると何でも20年前にうちで買ってくださったのだという。
なるほど・・・
20年の重みか・・・
少し話を伺ってみた。
「娘が難病にあって入院している」のだといわれる。
年頃の娘さんだという。
ふと思った。
気休めにしかならない言葉。
でも言わずに入られなかった言葉。
「きっと良くなりますよ」
「ありがとう」
改まった顔になり、素直に謝辞を述べられた。
少なからず心が揺さぶられた。
あまりにもストレートに反応してくださった「ありがとう」だったから。
そして、とても重い「ありがとう」だったから。
20年前に求めてくださったということは、病にあるお子さんは、乳飲み子だったのだろう。
その子とほぼ一緒にこの腕輪も大切に扱われながら、ご主人とともに連れ添ってきてくれた。
そんな時の経過が僕には何か不思議な感慨を与えてくれた。
そうか・・・
一緒だったんだ・・・