今年卒寿になるお得意様が杖をつきながら訪ねてくださった。
「もう来年はこれなくなるから」との弁に、一抹の寂しさもあったけど、今までありがとうございましたという思いも同時に湧いた。
もう30年近くなりますね。お付き合いさせていただいてから。
やることなすことすべてプラスになる。そんな福の神みたいな事業家。
だが利益を中心に事業を進めたことはない。
だいだらぼっちが歩くところには、緑の種が巻かれるというけれど、まさしくその如く人生を歩めれた。
「事業は社会還元のため」
「自分の利益を考えない」
「適正利潤、適正価格」
彼の口癖で僕の心に刷り込んでくれた。
若き頃、新聞に載った記事を「あんたにあげる」と渡された。
若き青年実業家の彼の顔がうつり、事業は世のためとその事業精神を語っておられた。
それがあって今があると無言で伝えてくれたものと信じている。
米寿になった奥様が最近入院され顔をげっそり痩せられた。
「神仏に祈っても自分のことは祈らない」そんな彼が、
でも女房のことだけはねーーとぽそっと言われた一言は、くっと胸に突き刺さった。
また来年も会いましょう。。。よ。