お直しで念珠を持ち込まれるお客様は、案外多い。
遠くから伝手を頼ってこられたり、あちこちの仏具店で断られ、たまたまうちを見つけ飛び込まれる方も多い。
長期間のお預かりを余儀なくされたり、高額だったり、新品を勧められたりで、ここもそうかなと思われつつあきらめ顔で尋ねられる。
手が空いているときは、その場で直す。
紐房や、本連の中通しくらいの直しなら、ガヤガヤした環境の中でもわけもない。以前は込み入った仕事もその場でこなしたけど、お客様の入店次第で中座しなければいけない小売の現場では、集中できないことが多い。なのでやめた。
ただ、他では1ヶ月かかるからと、うちの門を叩いてくださったのだから待たすわけには行かないじゃん。
「10分もかかっちゃいました」屈折した言い方だったかな・・・
「いや・・・ありがとう。父親の形見だったんだけど、母親の葬儀で出棺の時にパラパラと・・・」まだ法要は続けないといけない時に、念珠を必需品と考えていらっしゃる方には、なくてはならないもの。
喜びの顔。
ほんのちょっとしたことなんだけど力の元なんだよね。