物より者

巡礼用の足にと、再生中の自転車を時々乗り回している。

この自転車で全国を走り回っていたとはいえ、
30年休眠させていた。ということは・・・
つまり、
ぼくも30年休眠していたのだ。
感覚を取り戻そうと早朝に転がしているのだ。

錆と埃だらけの愛車に、手をかけていなかった年月を思い知らされた。

使えない部品は破棄し、手に入る昔のパーツをしこしこ集めた。

とにかく若い頃なら膨大にあった時間が一体どこに行ってしまったんだろう
と、不思議な感覚に陥りながらも、
時間の合間を搾り出し、わびながらコツコツいじっていた。

往年のレーサーの精悍さにはちょっと及ばないが、
まあまあのところまではレストアは完成できた。

オーダーして30年をゆうに越えた自転車とは、
遠目では見えない。と思う状態になった。
これで足は万全。

あとは天候と、写経と、お店の様子待ち。
三拍子揃ったら
すぐに飛び出せるように旅の準備をしている。

ただ・・・一点

乗り回している間に気が付いたのだが・・・
握力が予想以上に落ちていた・・・

握力が何キロになったのかはわからない。
けれど、
ブレーキに力が入らない。

以前なら二本の指で簡単にブレーキ操作ができたのに、
しかたなくバーの下に手を回して(要するに競輪のような姿勢になって)
ようやくスピードコントロールができる。

あれ・・・
こんなはずじゃあなかったのに。
巡礼をするためには峠を越えなければならないのに、どうするぼく。

もっと初めにレストアすべきものを、
忘れていたようである。

メメザアフリカ

夜中にNHKをつけているとBSの再放送ををしていた。

アパルトヘイト廃止後の南アフリカの状況をドキュメントしていた。

マンデラ氏が初代大統領になってすでに10年を有に越えた。
自由を掴み差別からの開放であったはずの国がその現状は、
貧困と無秩序にさいなまされる現状であった。

かつての商都の路上には浮浪者があふれ、
略奪と殺人とレイプが横行する。
一時のニューヨークのスラムの状況を見るようなありさまであった。

そこにあって、二十数名の全てが片親で育った子供たちが団員となり
歌で国を変えようと立ち上がった。

「メメザアフリカ」と言う。

http://www.memezaafrica.com/

http://www.memezaafrica.com/Track08.mp3

リーダーの妹はアフリカで10人に1人というHIVで若くして亡くす。
団員たちの衣装役立った彼女は死の間際まで彼らのステージ衣装に気を配っていた。
彼女の死を題材に兄であるリーダーが創った歌を涙ながらに全員が熱唱する。
「トコズィレ」という曲。

恐喝と薬漬けの毎日から歌に命を見出したパーカッション役のタボ。
貧しいが故に妻と子供と共に暮らせない悲哀。
それでも地元の若者に楽器を教える。
自分の歩んだ道を彼らにはトレースさせない為に。

歌にこの国の未来をかけようとする若者たちの姿に、
灼熱の大地の憤りと、悲哀と、復興の情熱を見た。

調べていたら、NHKのサイトからはもうHPを閉じてしまっていた。
ドキュメントを流す以上は、情報の糸口を残すべきでしょ。
と思いながら誰かのブログからURLを発見できた。