昼過ぎ、
パソコンに向かっていると、何となく背後に視線を感じる。
店は混んでいるほどでもなかったので、
せめてこの時間にというあせって、カタカタいじっていたのだ。
どうも、妙に背中がこそばゆい。
はっ!と振り返る。
そこに
ニコニコとして、婦人が立って眺めていた。
長らくお会いしていなかったが…当時も3~4回お会いした程度だったと思う。
けれど
瞬く間に記憶は遡った。
指折り数えると…
10数年ぶりに訪ねてくださったのだ。
「覚えてる?」。
何をおっしゃる、うさぎさん…ではなく。M子さん。
よ~~く覚えてますよ。
お客様の顔は、まず忘れないもん。
(ちょっと陰りが見えてきましたが…)
こういう再開は、本当に何よりも嬉しい。
「ずーと仏壇の前で祈ってんのよ」
どうしよう。
Mさんのこと、ぼくは一度も仏壇の前で祈ったことないよ。
でもね、
気付かされてはいるんだ。
今の仕事は、
僕ぐらいの器量でできる仕事じゃあないって事くらいは心得ている。
なのに、今まで続けていられる。
耳には聞こえてこないけど、
目にも見えてこないけど、
見えない祈りが集まって、
聞こえない声が集まって、
ずーと支えてくれているんだってこと。
だから、人を好きになるしかない。
僕にできることは、それしかない。
返せることは、それしかないって。
商売?
考えたことないよ。