過去にお寺の要請で製作した。
お年寄りのボケ封じ観音。
ボケの言葉は使わなくなったから、
「認知症除け観音」とでも呼ぶのかな。
ボケ、認知症、物忘れ…
30代までは、全く考えもしなかったことだった。
「ぼけ封じ」と聞いても正直ピンとこなかった。
言われたから作った。が本音かな。
感想も何もなかったような気がする。
老夫婦が観音様に慕う姿…
ぼくの感受性ではそれが限界だった。
けれど、ぼくも人並みに50を越えた。
10歩歩けば、何しに来たんだっけ?
「あの時、あのことで、あれしてさ、どうなったっけ?」
その会話がどうなったんだっけ?
だいじょうぶボク?
となってきて今、改めてこの像に再び向き合ってみた。
しげしげ見てみていると、何ともいえない安堵感が沸いてくるのだ。
何!この感触。
すがる気持ちが素直に、
わっかるなあ…
いつまでも、頭脳明晰である必要はないけれど、
「せめて世話にならないで生活できるレベルは維持していたい」
親の口癖が、自分の口から漏れる。
歳を重ねれば、きっと誰もがそう欲するのだろう。
何百年も昔から、
きっと同じこと思っていたんだろうなあ…
やけに、胸に沁みるぜ…