言葉を呑む
地元の歴史を調べるために、東京ガスの営業所内にある「浅草文庫」というミニ図書館に出かけた。
何度か紹介したことのある場所ではあるのだ。
私設ながら、浅草の文献に関しては、図書館の郷土資料室より豊富にあるので時間の合間を見計らって飛び出した。
土曜日と言うこともあってか館内は今まで見たことがないほどに人で埋まっていた。
目的の浅草文庫は二階の奥まった所にひっそりとしていた。
訪れる人もないようで館内はがらんとしていた。
入ってすぐに目に付いた「武蔵野風土記」。
手にとってカバーから抜いて中を確認しようとすると、後ろから声がした。
係員と思しき人。
「椅子に座ってみたらどうですか」
親切に教えてくれたのだろうと解釈して
「中を確かめるだけですから」と答えた。
「貴重な本なんだから」
「座りなさいよ」
「確認したら座って読みますから」と
なんだこの人は・・・
そして続けざまに、
「もう買えないんだよ」
「大事な本なんだよ」
「億劫がるんじゃないよ」
おいおい・・・。
そんなに大事な本なら展示するなよ。
のど元まで出かかったが飲み込んだ。
今日は目的があるからね。遊んでる暇はないの・・・
数冊鷲づかみに席に着いた。