諸行無常

仙台に住む叔母が亡くなったと姉から連絡が入った。
おまえどうする?と聞くから、「明日母を車に乗せて行ってくるわ」
と応えた。

叔母さんといつも言っていたが、正しくは祖母の妹にあたるのだから大叔母ということになる。

90歳をとうに越えているのだから大往生と言えば言えなくもないが、やはり寂しい。

青春時代は、熱烈な恋をして、恋人を追って阿武隈の山を越えて駆け落ちを企てた。
寸前に捕まえられ泣く泣く戻された武勇伝?をもつ血気盛んな女傑でもあった。
彼女を見ると竜馬の乙女姉さんとダブってしまう。

僕は幼年時代、あまりの虚弱体質に周りから心配されて、この家に預けられた一時期がある。

めっぽう男気の強い叔母ではあるが、同時にすこぶる情の深い人でもあった。
自分の子供と変わらず怒り愛し励ましてくれた。

田舎の水と空気と愛情に育まれて、数ヶ月の田舎暮らしではあったけれど、ものの見事に虚弱体質のキョの字も感じさせない悪がきになっていた。

母親が迎えに来たときそれが誰だか忘れるほど田舎に溶け込んでいた。
(単に薄情なだけかもしれないが)
もしそのまま田舎においておかれたならば間違いなく、別の人格の僕に成長していたことは間違いないだろうと思う。

そんな叔母も夫を先立たれてからは目の病気を患いついに失明し、30年来ひっそりと田舎家に暮らす身となっていた。

逝くことは、順番であるのだ(順番で逝ける事はある面、幸せなことでもあるのだけれど)、もうそこにいないのか・・・。諸行無常というけれど、なんだかとても不思議な思いに駆られる。

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