よくお直しで持ち込まれる。
もちろん同じお客様というわけではない。
おばあさまがお嫁に来られた時の花嫁道具の一つとして、とか、お婆さんが使っておられたのを頂いたのでとか、親子三代で使っているのでとかとにかく共通して言えることは、とにかく古いお念珠だということだろう。
だからというのではないが、最近の安価(もしくは安直)に作られる念珠と比較しても小さいし要は立派に見えないから大したものではないのだろうと値踏みしてしまうことが多いだろう。
玉の一個一個も不揃いだし・・・
これこのとおりなのだ。
けど、捨ててしまう前にちょっと想像してみてほしい。
おばあちゃんのお母さんの時代からなんていう話も聞くということ。
少なくとも大正時代、いや明治に遡れる時代に、水晶と珊瑚を使用した念珠を持っていらっしゃったということ。
その時代に水晶の磨きだしなんて手でろくろを回して作るしかないだろうということ。
そんな手間のかかる玉を180個もつないで作るわけで当時、安かろうはずはない。
また、婚礼祝いなのかもしれない。
なにか特別な思いを込めて手に入れたのだろうことぐらい察知できるというものだ。
そんな物語が伝えられていたのなら、TONもぜひ聞きたいと思う。
今回は仏壇の中にしまわれていたからと持ち込まれた念珠だったけど、手を加えればこんなに冴えるものなのだ。
緑色のはもともと付いていた房。
親から子へ、子から孫へ、孫からひ孫へ・・・代々、親心とともに次の代へ伝えてもらいたい。
念珠作りとしては、ついぞそんな気持ちにさせられる。