子供の頃は、近くの池にヤゴ採りに
よく行った。
益虫であることは聞かされて知っていたし
なにより身軽に飛行する姿は、大好きだった。
都会といっても昔は、そこいらじゅうに沼地や田んぼも残っていたし
ギンヤンマもシオカラもアキアカネも珍しくもなく、
当然に生活の一部としてあった。
市街化、特に土地の有効利用のため高層化する都会は
生物体系をことごとく変化させたように思う。
いなくなって初めて、貴重さがわかってくる。
自然は生き物なんだなあ…
朝、必ず店前に水を撒く。
一時の水溜りができる。
どこに生息していたのか、
ひらりとどこからか飛来するものがあった。
吹き出すホースの水に飛び込んできた。
トンボである。
おいおい…
ホースの水のいきおいに巻き込まれて、
路面に落ちて気を失ってしまった。
まだ新米だね。
見るとあまり知らない種類だった。
後で調べて「ノシメトンボ」ということがわかった。
拾い上げ、人工呼吸こそしなかったが、
すぐに息を吹き返した。
小さな命、けれど大いなる自然が戻った気がした。