ジンクス、未だ破られず。

この仕事に就いて、20年を経過してしまった。
その間、何台(わが業界では何本と言うが)
仏壇を納めてきたただろう。

初めの頃のお客様は、よく赤飯を炊いて待っていてくれた。

仏壇が、ただの箱物ではないということ。
しかも、死者のみ霊箱の為だけのものでもなかった。
とてもめでたいことなのだ。

本尊と仏さん(ご先祖さん)をお住みになっていただくおうちを新築した訳で
上棟式にお餅やお菓子を、地方によってはお金を撒く、
それと同様のものなのであるわけで、しょうがなく買うというものだはないのである。

だから、こんな若造が(当時の話)、出向いても
「良くぞお持ちくださった」とばかりに
下へも置かない待遇であった。

当時は、たいへん恐縮したものだ。

そうした、仏壇であるから、こちらも細心の注意を払って
お持ちした。

特に天候には気をつけた。
気をつけても、相手はまさに水もの。

思うとおりにはいかない。

あるとき、土砂降りの中、出向く羽目となった。
「施主さんは、雨の日に納品なんて、いやだろうなあ」
と思いつつ車を走らせた。

都内ではあったが、緑が多い。
アジサイや花々に木をとられ雨のことなどすっかり忘れていた。
車から降りると、
むっと、むせ返るような暑さ。
「あれ」雨どころか、雲間から日が差している。

これは好機とばかりに、急ぎ運び込んだ。
運び込みが終ったとたん、まさしく「とたん」に
ザーと、すこぶる強い雨足となった。

その日まで気づかなかったが、「納めのときに雨の中」
ということは、一度たりなかったことに気づかされた。
1年前の話である。

以来、どんな不利な状況でも、
大舟にいつも乗っている。

今日も例外ではなかった。