マスクをする。
しばらくしていると、ぽろっと取れる。
耳が、ではない。マスクの紐というかゴムが節操もなくポロンとはずれる。
商売人があるいは競馬の予想師が赤鉛筆をよく耳にかける。
子供の頃ためしに手にしていた鉛筆を耳にかけたことがある。
一秒も間を持つ暇もなく床に落ちて転がっていった。
授業中でなくてよかった。
どういうわけか僕の耳は上の部分が極端に短い。
だから、ゴムやら鉛筆などとんと引っかかる気配がない。
最近は要領を得て鉛筆は乗るようになったがというかくっついているが、
マスクのゴムは相変わらず敬遠される。
一時期顔の相に凝ったことがあった。
人相判断によれば耳の上から知真ん中の部分は意的、耳たぶは情を顕す。
ということは、知の足りない耳ということになってしまう。
その代わりと言ってはなんだが、真ん中部分は特出している。
要するに知もなく行動する人間、考えるより行動してしまう輩と判断されそうだが、そこらへんはオブラートに包んで行動的な人だと理解するようにしている。
ともあれ、マスクはいま、僕の耳からポロンポロン落ちていらいらさせているのだ。
どうも耳に引っ掛けるものはにがてだ。