「浅草松屋が2月いっぱいで上層階の営業をお終いにするんだって!」
上さんからの情報をみみにして上さん以上に驚いた。
まあ上さんは驚くというより、そのセールに驚いている節が見えなくもないのだが。
今日、欲しい本があったので銀行の帰りにちょっと寄ってみた。
ここに来るたびに昭和の香りがして心地よかったのだけれど残念だな、
建物を変に現代ナイズさせようとするものだから、いたって不健康な内装にならざるを得なかった。
大幅に全面改装すればよいことなのだろうけれど、関東大震災直後の建物。
もう今はそうやたらと見られない松杭で地盤を固めている。
ここはもともと、隅田川の河岸の土地。
地下水位はもともと高いし、変動は少なかっただろうから、松杭がしっかり生きているのだろうと想像に難くない。
そして今はあまり見ない、汲み取り式のトイレの建物でもあった。
若い人は、なに?それと疑問符がつくだろうトイレシステムである。
ここ数年目にしなくなったが、以前は表玄関からあのホースが床を這って、表通りに止めてある埼玉ナンバーのバキュームカーがうんうん唸りながらそれを吸い取っていた。
「ホー!」と感嘆符をあげながらまじまじと観察し物思いに更けていたものだ。
土台がそんな昭和いや、大正を思わせる建物なのだ。
でも戦争には持ちこたえた。
もちろん焼夷弾を受け丸こげになりながらも戦後は生きた。
操業当初の威風堂々の浅草の顔というには少々とうは立っていたが・・・
戦後復興の一助になったことは確かだろうし、子供時代の修学旅行の日光行きには必ずお世話になったところでもある。
装いも近代ビルに近づける工夫もされ、随所に多いがかけられた。
外観もこのデパートのイメージカラーに統一された。
でもね中身は昭和なんだよね。
せっかくの昭和。
ビルの外壁に使っている松屋カラーのシマシマを引っぺがして、元々のデザインを表に出してはどうだろう。
中身だけ昭和を謳い人気を博している、にゃん○ゃタウンの付け焼きレトロじゃない、筋金入りの昭和なのだから。
昭和レトロというより昭和モダニズムを前面に押し出して、浅草という土地柄を最大限に武器にして生かしたら、TDLに負けず劣らずのスポットになるだろうに・・・
上階層から降りるとき、ぼくは必ず階段を使う。
だってこんなオブジェ今どきないでしょう。
壁や手すりに使う人工石も何ともいえないアールと色合いを出し人のぬくもりをビンビン感じる空間である。
最近の御影石のつまらない張り石には絶対感じられないのだ。
ちょっと残念だ。