忘却

数日前に念珠堂の属する商店会の集まりに台東区社会福祉協議会から講師をお呼びして勉強会をした。

自分たちが被災者支援の一助を継続的に続けるために会員のベクトルあわせが大切と思ったから。
最期に質問をした。我々にできることは何ですか。と。
応えは至極明瞭だった。

「忘れないことです」

3.11。
ちょうどトイレ脇にある給湯室で昼食中にぐらぐらときた。

食べていた弁当を放って店内に飛び出した。
お客様が数人転げそうになるのを店員が支えていた。

商品棚は片足になるほどに左右に揺さぶられていた。
軽い香炉は数点すっ跳んで絨毯の床に落ちていた。

お客様と店員が安全であればそれでよい。
商品を避難させようとするとそれがかえって物を壊す原因になったりして・・・

とにかく店内の様子を見続けるしかなかった。

脇のエレベーターホールではタイルが落ちる音。外では何かがきしみ壁が剥がれ落ちる音。
揺れが落ち着いてから店の内外を見回ると、あちこちにクラックが走り、倉庫は全てが棚から落下。近所も外壁がいたるところで被害を受けていた。

そんな心不安な状態が治まる前に北の被災の報道であったのだ。
忘られるはずがあろうか・・・

でもね、日本人の特質は自分の中にしっかり持っている。

年が替わるたびに記憶は転換されていくだろう・・・こと。

だから・・・壊れた箇所を修理せずに残しておいた。
毎日目にするところに。

自分を自分でチェックする。

そんなことだけのためなのだけれど、手直しはしなかった。

絶対忘れるものか。

一日も早く被災地と言う言葉を使わなくなる日が来るようにと願う。

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