久しぶりに、特攻隊の生還者のお一人にお会いした。
予科練の教官もされたというから当時は、
猛者(もさ)の一人であったろう。
癌を患い、脳梗塞になりそのたびに、
無事生還を果たしてこられた
「今度」はないかもね…
と、おっしゃっていた言葉には、
不思議と、悲壮感はなかった。
身辺整理のおつもりで、いくつもあったお位牌を
奥様を亡くされたことを契機に、
ひとつにまとめられようと、わざわざ、いらしてくださった。
「日本昔話」に登場するような、なんとも人の良い翁。
古い日本人が、そのままのような語り口。
つい時を忘れ、話に聞き入ってしまう。
僕の小学校4年生の学級担任も、特攻帰りの先生だった。
特攻として飛び立ちながら、エンジン故障で着水して
九死に一生を得た、類(たぐい)まれな運の持ち主。
けれど心中は、傍から見るほど穏やかでは、なかったであろうその半生。
礼を重んじ、不礼には、びんたで応えるおっかない先生だった。
何度、ぶっ飛ばされたか覚えていなし。
しかし、いつも父のようにまとわり付き
甘えていた記憶だけが残っている。
話しながら、ふと思い出す。
自分も毎月靖国神社に、行かしてもらうんですよ。と、
お話したのが契機に、
「置き土産ね」と予科練の話をうんと置いていってくださった。
この足で検査入院だとか…
90歳を超えて、さらに元気でいて欲しい。