鎮静剤

沈香の玉を抜いた残材なのだけれど、10数年手放せない。
今だによく香る。

甘さと苦味がほどよく調和してこれぞ沈香なのだ。

当時はこんな程度のよい沈香が簡単に手に入った。

販売時にも平気で沈香木の塊にライターで炙ってくれたり・・・
実に粗野な時代といえば言えるがそれほどに豊富にあった。

「今は昔・・・」

まさに今昔の感がある。

ちょっと鉄

「1362」と聞いて都電のレール幅つまりゲージと連想する人がいたら
かなり「鉄の血」の濃い人と見た。

JRや東武電車や小田急電鉄や世田谷線を覗いた東急、相鉄線などの1067㎜。
新幹線を始め日本の標準軌となっているのが1435㎜
関西方面では、私鉄の多くが採用している。

そのどちらともつかないのが1372㎜。
1362㎜ゲージを東京ゲージとの呼び方もある。

そのルーツは東京都電の前身で明治15年6月25日に新橋ー日本橋間に開通した東京馬車鉄道のゲージに遡る。
「馬車鉄道」つまり電気の代わりに馬が小さな客車を曳いたのだ。
日本の電車事業は明治28年に京都市内で開通した市内線が初であるから、
13年間は、馬の力を借りてレールの上を馬車が走ったわけだ。

その軌道敷を利用して電車化していったために、馬車鉄道の名残が軌道幅として摩訶不思議なゲージとして残った。

今にいたるものは、京王帝都や都営新宿線、都電荒川線、東急世田谷線ということになる。

かたや都市間を結ぶ高速鉄道。
かたや専用軌道ゆえに全廃をようやく免れ、細々と一路線で運行している下町の足。
共通項を見出すのは、電気で走る乗り物くらいにしか感じない諸兄もおられることだろう。

そこには、今では考えにくいが、今では当たり前のように行われている、鉄道の相互乗り入れの名残でもある。
京王線が東京市電に乗り入れるという計画がされた。そのために市電側の1372㎜のゲージを京王線側が採用した。
市電は都電へと移り廃止され、京王線は都市間の高速交通へと変貌していった。

後日談として、都営新宿線が京王線と相互乗り入れをするため、他の都営地下鉄線が1435㎜の標準軌を採用しているにも関わらず、京王線の1362㎜に合わして1372㎜を採用したという。
めぐり巡ってとはこんなことを言うのか・・・

京浜急行の前身京浜電気鉄道も、東京市電と直通運転を計画し、わざわざゲージを全線標準軌の1435㎜から1372㎜に変更し、めでたく品川で東京市電と乗り入れた。
その後、乗り入れはご破算となってしまい、もとの標準軌に戻すと言う手痛い試行錯誤を繰り返すのだ。

京成線も王子電気軌道との乗り入れを画策し1372㎜の当初ゲージから、1435㎜へと改変し、都営浅草線が開通を待って、京急ー都営浅草線ー京成と1435㎜ゲージで手を結ぶこととなるわけだ。

考えると実に実に可笑しな縁を感じるのだ。
だから歴史は面白い・・・