後ろ髪

6月と言うのに、
もう仏壇屋は、お盆一色になります。

東京は、7月がお盆月だから今月が準備の月。
じゃあ、8月は…

もちろん、お盆月。

だから東京の仏壇屋は、秋彼岸が終わるまで、ずっとこの調子が続くことになる。
しかも浅草の7月は、あさがお市も、ほおずき市も、花火大会もあって、
人の切れ目がなくなってしまう。

以前は、体力まかせに時間も構わず営業したけれど、
もう気持ち(もっぱら体力かもしれない)が続かなくなった。

店を、開けっ放しにするより、
職人仕事に切り替えてしまうほうを選ぶ。

でもねえ…
一年にこの日しか逢えない人があるかと思うと…

ついねえ…

後ろ髪を引かれつつシャッターを閉める。

まあ…その縁が、ネットで出逢えますように。

歳重ね

商売柄、仏壇屋というのは、お年寄りとのご縁が多い。

もともと人の話を聞くのが好きだから、
苦もなく…というより興味深々で、その方の人生を聞きたくなる(時間の許す限り)

自分の人生は、まあ…せいぜい…よくて80年と思っているけど、
お年寄り(と思うことはないのだが)の話を聞くということは、
相手の人生のエキスを短時間に経験させていただける、
ということを意味していると思う。

プラス云十年。また他の方の話を聞けば、プラス云十年・・・
と、歳を加算できる気がしてならない。

そう考えると、自分は妖怪のような年齢になってしまうのだが、
今だ元気だ。

だから、聞けるときは、同調できるよう、
話しの環境にすっぽり入るようにする。

喜怒哀楽すべてに周波数が合うように。

中途半端だと聞き逃してしまう。

真剣勝負だ。
相手の人生の山谷をトレースしたいと思う。

昨日の元特攻隊のMさんの話もそうだった。
今日は93歳のおばあちゃま。

かくしゃくと一人で浅草経由で西新井大師に出かける。

「あんたんとこが好きなのよ」
と言って、小一時間浅草の昔話をして帰る。

誠に楽しい。
いったい幾つ歳を重ねただろうか。