盆提灯を見ると思い出す。

盆提灯に明かりが入ると
夢幻を感じる。

と同時に、「ほっ」と、僕の心が一息入れる音が聞こえる。

癒される。

この仕事を始めた頃、ある出逢いがあった。

仕事一筋の男性だった。
お仏壇を購入してくださり、お伺いすることになった。

その方は、奥様と二人暮しだった。
ただ、人と違うのは、奥様は意識がなかったということであった。
仕事一筋の企業戦士だったご主人は、
家庭を顧みる余裕すらない中、奥様が、家を切り盛り
典型的な企業戦士の家だった。

ある日、その奥様が倒れられた。
会社を辞め、自宅療養を余儀なくされた。
そんな時に出逢わせていただいたのだ。

初めて伺ったときも、寝たきりとなられた奥様を
かいがいしくも一人で、お世話されていらっしゃった。

二度目の訪問時は、仏壇を納めたとき。
同じような光景を横目に見ながらも
なにより意識のない奥様の下の世話までなさりながら、
ご主人は嬉々としてお世話をされていた、その働きように
心底感動した。

その数年後、
あまりにも急な昇天であった。

弔問にお伺いした。

内心、大変なお勤めから開放されたことで、
多少はホッとされていらっしゃるのでは?

などと、心のすみに思いを持っていた僕は、
心から侘びを入れなければならなかった。

正直、恥ずかしかった。
認識を改めさせられることとなった。

ご主人は四十九日間を文字通り「裳」に服しておられた。

線香を24時間いや、49日間切らすことなく焚き続け、
家を空けることはなかった。
天国の妻に聞かせて上げるのだと言い、
仏教書を読みふけっていた。

そんな薄暗い部屋の中に、
霊前灯の明かりが薄ぼんやり周りを照らしていた。
印象的だった。

亡き妻に手向ける夫婦の絆を見た。

励まそうと訪ねた僕のほうが、胸を熱くさせられ、
ひとつ灯火を持ち帰ることとなった。

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