お客様と共に歳を取る

もう20年来ふらあと来店されては一言二言話をされて帰る。
帰り際に「今度買うね」と必ず一言。
でもほとんど掛け声だけで終わる。

河岸の仕事をしていたからここに来るには遠回りもいいとこなのに
季節の変わり目のようにふらあと訪れる。

まだまだ歳若いのに刺青を入れてみたり、ヤクザの真似事をして見たり、
来られるたびに風貌が異なる。
でも一貫していたのは、神仏のものに関心があるということだけ。

ボンタンのような引きずるようなジーンズにジャラジャラといろいろなものをくっつけて、邪魔じゃないの?と言ったこともある。
へへ。と苦笑いして童顔を見せた。

しばらく顔を見なかった。

突然、閉店間際に顔を見せてくれた。

こざっぱりした洋服に、髪の毛も整えて髭もない。
話し言葉も理路整然としている。
子供が産まれたという。

「え!結婚したの?」
ぐちゃぐちゃの顔になって照れる。

「子供を食べさせないといけないから
母ちゃんも働いている。俺が見てあげないといけないしさ」
へえ。お父さんをやっているんだ。

「偉いじゃん」僕が言うと
また照れる。
はにかむ顔は、昔の顔だね。

責任を持つと人間、変わるんだな。

「今度子供連れてくるからさ」
「母ちゃんも連れといで」

別れた。

こんなやり取りが好きで、
店は続いてきたのかもしれない。

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