浅間の風

ミクシーの知り合いが、
軽井沢を旅するという話を聞いて、
ふっと記憶がよみがえった。

はじめて軽井沢に足を伸ばしたのは、
堀辰雄の小説を読んだのがきっかけ。

「風立ちぬ」の舞台となった、
旧軽井沢に思いをはせた。

社会に出て2年目。
ほぼ毎日、自転車漬けになっていた頃だった。
もちろん足は、自転車となる。

横浜から長野までは輪行(車内持込)し、走り出す。
雨男の自分には珍しく、天候には恵まれた。

どこをどう走ったか、記憶にないのだが、
千曲川沿いに走り、
八角の五重塔のある、上田(塩田)に立ち寄る余裕もなく、
追分へ急いだ。

どこをどう回ったのか30年の年月は、
その道程を全くトレースできない。

ただ、記憶にあるのは、
どこまでつづくか知れない、浅間の雄大さ。

そして、碓氷峠からのダウンヒルの醍醐味。
高度を下げるたびに変わる風の匂いと緑の色合い。
爽快だった。
ときどき目に映る、明治の鉄道マンたちの遺構の異様さ。

そんな断片的な記憶ではあるけれど、
貴重な思い出である。

今でも「軽井沢」と聞くと、
いつも、浅間の風が吹く。

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