巡礼用の足にと、再生中の自転車を時々乗り回している。
この自転車で全国を走り回っていたとはいえ、
30年休眠させていた。ということは・・・
つまり、
ぼくも30年休眠していたのだ。
感覚を取り戻そうと早朝に転がしているのだ。
錆と埃だらけの愛車に、手をかけていなかった年月を思い知らされた。
使えない部品は破棄し、手に入る昔のパーツをしこしこ集めた。
とにかく若い頃なら膨大にあった時間が一体どこに行ってしまったんだろう
と、不思議な感覚に陥りながらも、
時間の合間を搾り出し、わびながらコツコツいじっていた。
往年のレーサーの精悍さにはちょっと及ばないが、
まあまあのところまではレストアは完成できた。
オーダーして30年をゆうに越えた自転車とは、
遠目では見えない。と思う状態になった。
これで足は万全。
あとは天候と、写経と、お店の様子待ち。
三拍子揃ったら
すぐに飛び出せるように旅の準備をしている。
ただ・・・一点
乗り回している間に気が付いたのだが・・・
握力が予想以上に落ちていた・・・
握力が何キロになったのかはわからない。
けれど、
ブレーキに力が入らない。
以前なら二本の指で簡単にブレーキ操作ができたのに、
しかたなくバーの下に手を回して(要するに競輪のような姿勢になって)
ようやくスピードコントロールができる。
あれ・・・
こんなはずじゃあなかったのに。
巡礼をするためには峠を越えなければならないのに、どうするぼく。
もっと初めにレストアすべきものを、
忘れていたようである。