気付きを与える

木鉦という仏具がある。
日蓮宗で使用する木魚のような仏具。

叩くとカンカンと甲高い音を立てる。
力強い日蓮宗の勤行にさらに拍車をかけるハイな音が売りの仏具である。

数日前にお買い上げくださったお得意さんのkさんが、音がおかしいよ。
と、お持ちになられた。

Kさんは、「木目の向きがおかしくない?」という。

よくよく見ると、音のよい木鉦は打つ面に対し木目が平行方向になっている。
なのに音の悪いものは、木目が直角方向になっているのだ。

つまり、木目を打っているようなものである。
木場を叩いても音は出るわけがない。

明らかに木取りの製作ミスだ。

「ごめんなさい。お取替えします。」
担当者と僕がKさんに謝ると、思いの外の答えが返ってきた。

Kさん曰く。
「ぼく自身、当たり前なことを当たり前なこととして押し通しているかもしれない。
きっとそれを教えてくださる反省材料なんでしょう」と、自戒を促すため出あわせてもらったと喜んでおられる。取り替えるなんてとんでもないということなのだ。
新たなものは持っていってもらいはしたが、自戒の木鉦はKさんの宝物となった。

さらに、
「これは叩く木鉦ではなく、見る木鉦なのです」
ともおっしゃった。

気付きを与える仏具・・・

腑に落ちた。

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